MicroED/3DED

TEM内で試料を連続傾斜させながら、微小結晶からの電子線回折図形を取得

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概要: 

連続電子線ディフラクショントモグラフィ、マイクロ結晶電子線回折(Microcrystal Electron Diffraction;MicroED)、三次元電子線回折(Three-Dimensional Electron Diffraction;3DED)は、透過型電子顕微鏡法(TEM)と電子線回折法を組み合わせた構造生物学と材料科学における強力な観察手法であり、ナノスケールの結晶の原子レベルの構造を解明することが可能です。この手法では、微小に集束した電子ビームを用いて微小結晶(<500 nm)からの回折図形を取得し、同時に試料を連続傾斜することでその三次元構造の決定が可能となります。

MicroED/3DED法の主な利点

MicroED/3DED法の大きな利点のひとつは、結晶寸法の制限によって従来のX線を用いた結晶構造解析法では困難、または不可能な試料を研究出来ることです。より小さな結晶(<500 nm)に対してもMicroED/3DED法を適用することが可能であり、膜タンパク質のような困難な試料に対してより簡単に解析が可能です。放射光X線自由電子レーザー(XFEL)は小さな結晶(>500 nm)にも使用出来ますが、ひとつの蛋白質や低分子の構造を決定するために、場合によって数百から数千という多数の小さな結晶が必要であり、結果としてこの手法は労力を要すると同時に高コストです。それと比較して、MicroED/3DED法は わずか数個の小さな寸法の結晶のみが必要であり高速かつ高分解能の解析を実現します。

MicroED/3DED法のワークフロー

  1. 結晶成長:対象となる薄い結晶試料を準備する。結晶は電子が透過するよう厚さが500nm未満になるようにする。
  2. グリッドの準備:結晶試料をTEM試料グリッド上に載せる。

メモ:結晶成長と準備の手順は、対象の材料に大きく依存し異なります。場合によっては、クライオの手法が必要となる場合もあります。

  1. スクリーニングとデータ取得:良好な回折条件を示す薄い単結晶を探し、結晶に電子線を照射しながら試料ステージを傾斜し連続的に動画としてMicroED/3DEDデータを取得します。
  2. データの可視化:連続的に取得した回折図形から結晶の良い回折条件を示すフレームをそれぞれ抽出し可視化します。

メモ:自動、高スループットでMicroED/3DEDデータを取得したい場合には、Latitude® D ソフトウェアをご利用ください。

  1. データ処理:広く使用されているX線用のソフトウェアを使用して、MicroED/3DEDのデータ取得で得られた連続的に傾斜した回折図形から指数付け、統合、スケーリングを各フレームに対して行います。
  2. 構造生成:Coot、Phenix、SHELXといった様々なソフトウェアパッケージが構造解析とリファインメントに利用可能です。このプロセスでは、回折データから得られた電子密度マップに原子モデルを当てはめていきます。

MicroEDと直接検出型電子カウンティングカメラ

電子ビームに起因する試料の損傷の受けやすさは、MicroED/3DEDのデータ取得に使用可能な電子線照射量を左右するため、直接検出型電子カウンティングカメラの重要性が明らかになります。電子カウンティングは、電子の散乱による信号強度の変動と読み出しノイズを排除することによって全ての空間周波数においてシグナルノイズ比(SNR)と量子検出効率を大きく改善します。これによって、特に強度の低い高分解能の周波数領域における回折スポット強度の正確な測定が達成され、低い照射電子線照射量においても高分解能の構造決定が実現されます。

シンチレータベースのファイバーカップリングカメラ(OneView®、ClearView®、Rio®)や直接検出型電子カウンティングカメラ(K3®、 Alpine®、Metro®、Stela®*)を含む、現行の全てのデジタルカメラとエネルギーフィルタでMicroED/3DEDの測定が可能です。Gatan社製の直接検出型電子カウンティングカメラでMicroED/3DEDデータを取得する場合にはビームストッパーが不要です(より正確なディフラクションフォーカスの設定と効果的なデータ処理に有効)。 また極めて低いバックグラウンドと高いSNRで回折図形を取得することが可能です(極めて低い電子線照射条件における高分解能の構造決定において有効)。

*StelaカメラはDECTRIS社製ハイブリットピクセルテクノロジーを使用しています。

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