方位マッピング

材料の結晶粒の構造を解析することは、強度、電気伝導性、イオン伝導性などの特性を理解する上で極めて重要です。電子顕微鏡を用い材料中の個々の結晶粒の方位マッピングを行うことによって結晶粒の構造を調べるには主に二つの方法があります。ひとつは菊池図形を指数付けすることであり、もうひとつは電子線回折図形から回折スポットを指数付けすることです。

回折図形の指数付け方法の最適な選択は、試料の厚さと行いたい解析に依存します。例えば、菊池図形を用いた指数付けの場合、走査型電子顕微鏡(SEM)の電子線後方散乱回折(EBSD)を利用し、試料はバルク試料を用いて広い領域(数μm以上)の解析が行われます。一方、高分解能(~1nm以下)が必要な場合には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いる必要があります。ここで試料は電子線が透過可能な程に薄い必要があり、個々の回折スポットの指数付けによる手法がより適当です。

TEMの方位マップは4D STEMのデータセットを取得し、各ピクセル位置における回折図形を指数付けすることによって得られます。 パッケージを備えたGatan社製デジタルカメラを用いることで、高速で高いクオリティの4D STEMデータを収集することが出来ます。それを使用し、DigitalMicrographソフトウェア内のSTEMx OIM機能を利用して回折図形を指数付けし方位マップを生成するために自動テンプレートマッチングを行います。STEMx OIMで他に必要な情報としては、回折図形をシミュレートし指数付けするための材料の構造情報(CIFファイル形式)です。STEMx OIMによって生成される方位マップデータは、さらなる解析のためにEDAX OIM解析システムへとインポートしたり、DigitalMicrographのeaSI technologyテクノロジーによってEELSやEDS、あるいは他の4D STEM解析データとリンクさせることも可能です。