バッテリー材料と中間相の解析のためのクライオTEM

気候変動に対する輸送機関の脱炭素を実現する上で、リチウムバッテリーは鍵となる役割を果たします。しかしながら、性能向上を目的とした新たなバッテリーの化学反応の採用は、バッテリー中の複雑な界面と構造の理解の不足により限定されています。 これらの内、最も知られた構造は固体電解質中間相(Solid-Electrolyte interface、SEI)とバッテリー陽極に存在するパッシベーション層です。このSEIはバッテリーにおいて“最も重要でありながら最も理解が遅れていた”分野と言われてきました。それは陽極の安定性と繰り返し性能を決定するものであるものの、大気や湿度、電子線照射などに対する敏感さから透過型電子顕微鏡(TEM)のような電子光学系を利用したナノスケールでの解析に高いハードルがありました。

近年の材料科学分野におけるクライオTEMの進展によって、望まない反応や電子線損傷無しにTEMでリチウムをベースにしたバッテリー材料の観察が可能となりました。バッテリー中の電気化学的特性と劣化現象に対してこれまで得ることが困難であった知見がもたらされ、SEIの化学とナノ構造が可視化され、バッテリー性能と直接相関付けることが可能となりました。本発表では、William Huang博士が次世代のシリコン、金属リチウム陽極におけるSEIの特性と故障モードを理解するためのクライオTEMを用いた最近の研究成果を紹介します。