半導体材料とデバイス

共通の課題

マイクロエレクトロニクス業界で開発されている先端材料は、デバイスの微細化や新たな三次元構造の開発に望ましい数多くの独自の特性を備えています。材料の具体的な特性としては、極めて高い強度、柔軟性、光透過性、熱伝導性などがあります。研究者たちがこれらの材料の製造と特性評価に膨大な労力を注ぐ一方で、これらの材料の新製品への投入とその後の製造プロセスが引き続き課題となっています。通常、これらの課題は、製造を進める上で必須プロセスの精度とデバイスの生産性に影響を与えます。これらの課題に先手を打ちハードルを下げるには、以下の情報が役立ちます。 

  • 材料またはデバイスの原子組成
  • トランジスター素子の制御に与える影響
  • 化学特性
  • 材料特性を明らかにするための分析の手法確立と容易さ

革新的な手法

半導体材料やデバイスの特性を的確に評価し、理解するには、まず最初に、材料界面を識別できるように各試料が高品質であることと、必要に応じて環境刺激下で処理できるように各試料が適切に管理されていることが重要です。試料を作製したら、デバイスの性能を向上させるため、材料の複雑さと欠陥をより深く理解するためにいくつかの手法を利用できます。

原子分解能の化学および組成分析。
ナノメートルレベルの分解能で像内の元素と化学物質を強調しマッピングを行い定量化するイメージング手法の1つ。
EELSデータの空間分布を生成するための体系的な方法。
材料の成長、素子の超微細構造と不具合を理解するのに役立つ、権威ある賞を受賞した高分解能イメージングツール。
成長過程、化学反応と酸化、照射効果、機械特性、磁気特性、強誘電特性をリアルタイムで観察。
独自のSEM、TEM、またはSTEMアプリケーション用に試料を切削、エッチング、研磨、および凍結するための高性能ツール。
試料の元素または化学特性を解明するのに役立つ。
材料の結晶方位や組織を調べるのに役立つ。

関連するアプリケーションの詳細については、「発光材料および発光デバイス」または「電池およびエネルギー貯蔵技術」をご覧ください。

結果の活用

組成分析

AuGeNi オーミック接点は、接点の抵抗が小さく、一般的にIII-V MOSFET素子の製造に適しているため、広く使用されています。しかし、III-V回路基板にAuが拡散するため、均一性に劣るという短所があります。この拡散は、Au、Ge、Niのデポジション後の焼きなまし処理時の温度に依存します。EELS手法やEFTEM手法を使用すると、III-V回路基板との接合部分に存在する物質と接合部分の粗さが素子の性能にどのように影響するのかを調べることができます。試料はグラスゴー大学様、顕微鏡はアリゾナ州立大学(アリゾナ州、テンピ)のRay Carpente教授のご厚意によるものです。実験を行う際の顕微鏡の設定は、Jeol USA(現在のASU)のToshiro Aoki博士にご協力いただきました。

トランジスター制御の理解

II-V半導体上の酸化物の原子EELS分析を実施すると、As、O、Gaの強度ラインプロファイルを抽出できます。この例では、GaAsのダンベル構造を明確に解像できるだけでなく(カラーマップの左側)、GaとAsの原子列も可視化できます。界面領域では、Ga2O単分子層の存在も確認することができ、電子素子のオン/オフの切り替えを可能にするフェルミ準位がピンニングされていない原因になっていることがわかります。左上の画像:環状暗視野(ADF) STEM像。右上の画像:EELSカラーマップ。Ga:緑色、As:赤色、O:青色。試料はグラスゴー大学様、電子顕微鏡はフロリダ州立大学(フロリダ州、タラハシー)のYan Xin博士のご厚意によるものです。実験を行う際の顕微鏡の設定は、Jeol USA(現在のASU)のToshiro Aoki博士にご協力いただきました。

 

化学分析

分子の状態、密度、原子分布を理解することは、半導体素子の化学的状態を正確に特性評価する上で重要です。下の元素マップのスペクトル画像は、バンド構造内の化学的状態とシフトをより深く理解するために、複数の手法(エネルギー損失吸収端微細構造(ELNES)、エネルギー損失微細構造(EXELFS)、原子固有の動径分布関数(RDF))をどのように組み合わせることができるのかを示しています。

分析手法の確立と容易さ

Gatan Microscopy Suite® (GMS)を使用すると、再現可能な方法で簡単に半導体を分析することができます。GMSは、シンプルになったユーザーインターフェイスと実験重視のワークフローを備えた、最先端の電子顕微鏡法ソフトウェアの完全改訂版です。このソフトウェアは、完全にインタラクティブなユーザーインターフェイスと電子顕微鏡へのアクセス、最新のデータ処理と手法に基づくワークフロー、ユーザーフレンドリーなEELSおよびEDSによる定量化機能を備え、結果を得るためのプロセスではなく結果そのものに集中することができます。